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空間を支配し続ける沈黙

そして指先にまで纏う、中性的な品位


人間の美しさと闇の間を行き交い、舞う。

存在があらゆる感情を超えた姿。
曲線の残像は、穢れのない人間の魂そのものではなかったか。



それはやがて、十数分間の間に目の当たりにすることができた「美しさ」だったのだと、最後に漸く理解できる言葉となった。

それまで辺りの時間は、
尚もまだ、引き込まれたままだった。




舘形 比呂一

かの荒木節子氏が主催するファッション合同展示会・アンビアンスにて、会場である青山ベルコモンズでは、様々な分野で突出した才能が集まり、各日程にて披露されていた。


すなわちこの日、訪れたその日の、その十分程しかないその時間に、偶然立ち会ったことになる。
日本のコンテンポラリーダンスに、そしてその象徴に。




私が混乱していたのは、それまで私の見ていた世界との差異であり、振れ幅の大きさにあった。


ショックだったのだ。
表層と本質の狭間で、その人の主観を越える瞬間があるとすれば、それは気付くということなのかもしれない。
世界に。そしてその自分に。


圧倒的な光景を前に、私はあまりにも無力だった。

その時、あの時荒木氏が触れていた本意が、分かったのだ。


私は、触れたかった。
そして解釈したかった。


柔らかな世界に咲く華々は、究極の引力であった。
そこにはかつてない崇高な世界が広がっていた。
* * *




冬の透明な空気は、穏やかな街を一層と引き立たせ、吹き抜けがある建物はちょっとしたお城のようだった。
新しい事務所は白く、既に記憶の中となった風景では、緑が鮮やかな冬の明かりに輝き見事なコントラストで揺れていた。
それは暖かい部屋の中の品々が、シンプルに彼の世界を現出していたからなのかもしれない。


改めて撮影を終えた後、私の中では、寒く冷い窓の外と対峙する、ここにあるあらゆるもの―
包まれるような暖かさ、優しさ、そして美しさなどといったもの全ての理由に、触れたい気持ちに駆られていた。
彼の柔らかくどこまでも溶け込んでいってしまいそうな透明感に、いざなわれ始めていた。


この日、彼の出演したTVやDVD、その他多数の関連雑誌の中から、いくつかのリーフレットを持参していた。
私はテーブルの上に、あるフェスティバルで彼が踊る写真が載ったリーフレットを開いた。
妖艶なメイクを施した姿は、この前の姿と同じだった。



私は現実とあの美しさの溝を、まず最初に埋めたかった。




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