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荒木 節子

ファッションは情報産業として独立している。
従って、情報はよりコモディティー化を伴って伝播する。
情報の商品化は今に始まった事ではない。ただ現代はビットとなって溢れているだけ。
その上この種の情報は、新しいほど偉い。

通常、我々が興味を持つのはこちらの方。
だがその内部では世界も業界も人間も変わる。
その源流に向かうにつれ袋小路で彷徨うような事態となるのは、前記の情報商品とは性格が全く異なるから。

今回は、その内部の川上に立ち入った。
これまで現代は、縦の視界よりも横の繋がりが強まった結果、あらゆるものが断続的である。
だから二次元で行き詰った世の中(業界)で、意義ある見解を提供しようと思い立った訳だ。
その結果、95%が海外からのビューワーにも関わらず、今号のメッセージは国内の更にはデザイナー向けとなるのである。
言わば、日本のファッション業界の内側の吐露である。

『この間、神戸のファッションコンテストに立ち会いまして、そこで毎回出るようなテーマでもあるんですけど、結局、日本人が向こうに行っても成功しないのは何でかっていう。
これは一食単にしている訳ではないのですが、両方あるんだと思います。
酷なこと言うと才能の限界から、値段の設定から、いろんなことがありますが、要するに、あまりにも知らな過ぎる―
日本人が向こうに行くに当たり、海外でのビジネスを成り立たせる為には、先ず人脈を広げ多くの人からのアドバイスを得ることが不可欠です。』




荒木節子

山本耀司のプレスとして長年に渡る日本のハイ・ファッションを最前線で見続けてきた。
その後合同展の草分け的な存在でもあるANBIANCE(アンビアンス)を立ち上げる。
現在同展オーガナイザー。新気の若手デザイナーを支えている。




更に成功させるには何が必要かという事を考えた場合に、やはりある程度資金力を持って余裕を持って行かないと、行っても長続きせず、一回行って終わってしまう。
本当に才能を持っていても、結局資金繰りができなくなって立ち行かなくなる。
本当に残念です。
そこそこ行ったとしても、資金力がないと残れないのです。


あと常に言っているのは、人目につかないと人は付かないという事。
そういうことで若い世代は特にそうです。行って駄目で帰って来ての繰り返し。
先駆者であるデザイナーは日本で地盤を作ってから、夢を持って行って、作るものにもすごく安定したものがあって成功しているわけです。そういう、やはり段階を踏んでいかないと、どうしても成功には結びつきません。
今見てみると、日本人で進出して成功しているのは、その先駆者である3人とそれに続く何人かの人。
若いデザイナーがなかなか続かないのは、目的意識の低さにあるのだと思います。


それと、日本のファッションを広めるという意味では、このところちょっと違った動きがあって、私はそれが良いか悪いかはちょっとまだ分かりませんが、渋谷のストリートファッション。それを含めてガールズコレクションというもので日本を紹介する―
また最近になって原宿の一部のファッションをアニメと一緒になって紹介する。
でも本当は日本は違うんじゃないかって思うのです。
やはりファッションは素晴らしいし、セレクションは熱心。だからもっともっと広める努力が必要なんだと思います。
これは何が一番良いのか分かりませんけど、もっと国なり、大きな組織が音頭をとって …でもまだまだそこまで行っていなくて、「海外へ」という意味では本当にもっと大きなことをやっていかないと―



昔は日本人はヨーロッパの真似をしていたのですが、今は逆です。原宿や渋谷のアイデアが使われるようになりました。
だからちょっとずつ目を付けられて持っていかれますけど、何かそこで全体でまとめて、本当に日本というものを魅せないと。
何か、いつも盗られている気がします。
ヨーロッパなどでは、東京は早いって言われている通り、靴にしても小物にしても流行が早いです。そこから服のデザインへ注目が集まるのだと思います。


―日本は今は原宿、今は渋谷ってそんなないですよね。
でもパリなんか行くと今はここが一番っていうのが必ずあります。面白いですよね。
人が集まるという意味で、興味深いですよね。
六本木もミッドタウンが出来て人の流れも人種もイメージも変わりました。
古い話ではなくて、都市はやはり要なのかもしれません。
JF: 国内ハイファッションデザイナーの多くは東京コレクションではなく海外のコレクションを目標にし、海外では東京コレクションが取り上げられないケースもあるようです。

JFW(一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構)作ったという意味もあまり分かりませんし、総じてまとまりがない。
東京というものを海外に知らせて、ジャーナリストやバイヤーの方が来るようにしたいと始めた訳ですけれど、話が凄く早過ぎて皆付いて行けなくて。
ちょっとずつ変わってますけれど、結局それにしてもあんまりまとまりが無くバラバラ。
海外の方から東京のコレクションってやってるの?とか、会場が煩雑にありすぎて、どこそこの会場は何処ですか?って聞かれてしまう。
結局こういう事が凄く悪影響。
東京って凄く面白い、海外の方が想像して思われている以上に、いい感じ。
その分なんかまとまりが無くて、やっぱりそこが残念ですね。



JF: 予算も減らされてJFWの予算も半分になりました。

その半分も政府から繊維だったり、いくつかの産業あてだったりしますので、JFWがいくらもらうか分かりません。結局、体力もなくなった。
もし今後も続けていくとしたら、一外部からの提案をしておりますが、色々な団体、教会、CFD (COUNCIL OF FASHION DESIGNERS)も含め母体を大きく一つに纏め、諸外国からの対応も受け易くなる事もあり、国からの支援を受け、そしてJFWとして続けていくのであれば、是非リーダシップを取って頂きたい。

それに通産省とかからの助成金が出ても創るまで行かない。
展示会は良いがショウは駄目、繊維はいいけど皮は駄目とか凄く規制があって、その辺ももっと砕けて欲しいですよね。



JF: 例えばプレタポルテ界でストリートを持ち込んだようなundercoverに続くデザイナーが出てきません。

最近ちょっと見ていませんけど、彼(高橋盾、デザイナー)の元々持っているのはストリート系だったんですけど、ショウをやるとそこにちょっと問題があって。
ストリート系とプレタポルテを分けるっていうんじゃなくて、ショウで魅せるっていう意味では、やはりそこに少しモード性がないと、結局は取り合われませんよね。
またショウをやるというのは、そのデザイナーの意気込みですから。
やることによって、持っている中でまた別の凄く良いものが出て来ますし、今まで無い物が出てきますし、自信も高まるし。
強いて言うならばそういう意味があってこそ、デザイナー自身の話。
今凄く残念なのは、バイヤーも来ないし、ジャーナリストも来ないし、皆凄く消沈しそうになっている。
でもそういったデザイナーが出てくるまでの問題で、まず育ってこない。


育成プログラムなどの言葉を多く耳にしますが、実際にJETRO(日本貿易振興機構)が加わって、向こうのサロンに出せるとしても、出品費用は半分だけの援助で、渡航費、あとホテル代は全部個人持ち。これだとあまり意味が無いような気がしました。


本当に今、力を入れて欲しいと思うのは、スターを作り上げていくこと。
日本からスターを出すこと。これが一番です。
たぶんこれは何処の国でも思っていることで、学校でもコンベンション、コンペでもそうですし、色んなところでやってますけど、スターを作るところまではどこもいっていない。
多少良いクリエイティブなデザイナーがもし見つかったら、本当にとことんお金をかけて作り上げて欲しい。
だから、短期でサロンの費用を半分出した、ではなくて、もっともっと長い目で。
作る過程で凄く大変なのは、資金が尽きていくこと。そんなデザイナーは多いのです。
ヨーロッパでは国や機関のサポートがまだある。
JF: ファストファッションが来ました。

20年位前から、SPA(工場直通)が言われていたにも関わらず、誰もそこに目を向けなかった。これってやっぱり怠慢だと思います。いずれは来るって分かっていながら。企業なりどこかがやるべきだった。
結局はアメリカなりヨーロッパなどに先手を打たれました。
でも日本には量販店が間に合っているから、ちょっと違うのかなと。

でもこれは、私個人の意見としてやはり今は多様化していますから、ユニクロで下着を買う、そしてちょっとお洒落したい時には今の時代の匂いをしたものを買う。自分が気分良くなりたいときはちょっと高いものを買うというように、凄く多様化している中で、高いものをどうやって今風に買ってくれるように持っていくか、その辺が考え方ですよね。
安いものは黙っていても売れます。結局、そこで買う人たちの方が多い。

大きなメゾンなんかはその辺で足掻いている。
結局、今までのお客様とのつながり。
でも段々とお客様も年をとってきています。
特に若さがないと、やはり若い人は付いて来ないですよね。
会社ぐるみで、メゾンぐるみで、大きな変化をやっていかないと。


それに今デパートが傾いているというか、お客様が少ない。
一軒一軒見てみても、全然変わっていない。
本当に変わっていないというのは怠慢ですよね。
全然何も変わっていなくてがっかりしました。
何かそこにアイデアを持っていって売り場なんかガラって変えてもいいし、変えるっていう意識が足りないんですかね。
付加価値は何でしょうか。
これから淘汰されていくんだと思います。
デパートなんて、数が多過ぎますよね。
でも最近のプレステージの喪失は残念です。

今って良い物が売れるという時代ではなくて、何かそこに付加価値が無いと難しいですね。消費者の方が変わってきているので。

何かみんなで考えていかないと。本当に。早い内にね。
無くなりはしないと思います。
でも少し淘汰されて、時代が望んでいるものが受け入れられていくでしょう。
FOR DESIGNERS―


不景気って言葉
不景気といっても、それにやっぱり打ち勝つような考え方でないと。
不景気だからという、何か閉ざされた感じでは無くて、そこにもっと違う目で見て欲しいって気持ちがあります。
デザイナーもしょうがないなっていうふうに思わないで、何か自分で考えてやっていって欲しいな。

結局サロンをまとめていると、公共のサロン出ているから安心という、一つそういうものがあって。 出したから安心、そうじゃないでしょう。
特に若い世代なんてやっぱり喋らないし、よく言えばシャイですけど、でも喋らないとお客様もきません。何人かはいます。ほとんど喋んないで待っている感じ。
昔はね、それで良かった時代もあったんです。
今はそうは行かないんです。
自分でプレスも営業もやんなきゃいけない。そして心底説明しないと買ってもらえない。

色んな意味で、多くを求められている。

お店を出しても、結局は同じことなんです。
自分のお店を出すとそこで安心しちゃうんですよ。
お店は生きていますから、力を入れ続けないとすぐに駄目になるんです。

それに昔は違うものを作ったらそれが売れた。良かった。
ただ今後はそうは行かないと思う。

前会社を辞めるとき、洋服はいっぱい持ってまして、10年位は買わなくて良いかなと思っていたけれど、結局もたなかったですね。
生地はいいけれどやっぱり、シルエット、あとラインが全然違ってきます。
それだけ難しいということなんです。

昔売り文句に、生地が良いから10年もちますという言葉がありましたけど、今は聞きません。

時代の流れが最近速過ぎますよね。



昔、本当に良いものを作っていて「凄いねこの人」って言われて「でもあの人少し変なんだよね」って言われる人、最近居ないんです。
本当にみんな良い子。
あと怒らないですよね。怒りが無いっていうか。
私は川久保さん(デザイナー、コムデギャルソン)の歩いているところを見たりしていますが、彼女はいつも顔が怒っている。
今の子は怒らない。

黙って今までみたいに絵を描いて、デッサンして、パターンを引いて創るのではなく、本当に広い意味で色んなものを見て欲しい。
素人目線で見てもらった方がもしかしたらうまく行くかな。
創る側の目線ではなくて、買う側の目線で。
今どんな業界でも素人が長けていますよね。作り手に全部あるとは言いませんけど。
もうちょっと自分をそっちに持っていって。
立ち位置をちょっと変えて、創る側に。

作れる人は何かかんか作っていますよね。
そういう意味では、もしかしたら昔みたいに顧客を持って、ちょっとしたオートクチュールのお店なんかもでてきても良いですね。
大きな意味で繰り返す時代もあるものです。

またどんなに素晴らしくても、これ一式何処に着て行けばいいの?というものではなくて、本当にその時代の匂いというか、雰囲気があるもの、これは洋服に限らずですけど、やはり時代は逆らえませんし、
Ambianceの出展の際、作品を審査する上で、いつも見るところがあります。
クリエイティブさ、オリジナリティ、それから時代性。これがやっぱり作品に入っていないと、時代に取り残されるというか。

ファッションというのは凄く鮮度があるものですから、時代外れっていうのは見向きもされませんから。
たぶん創る人たちも、一歩先よりも半歩先。
この位の勢い。早すぎても駄目。
凄くアイデアがあっても早すぎると駄目で。一歩先よりも半歩先。
このくらいが一番丁度良い訳です。


日本のファッション界の中心から伺った一貫したテーマは重要なテーゼであった。
共通認識は、今朝の朝刊の言葉を借りるなら、「日本には対策があって方策はない」であろうか。
色々なところでばらばらな理由も断続的な対策の結果である。
さらに、個人も組織も社会も、「変化を認識すること」なのであろう。
それができると、先へ進める。
だが、それは元の場所へ進める意味ではない。


ミッドタウン一帯がNYのセントラルパークのように見えるジャパンファッションのオフィスからはいつも見えない三田や元麻布の全景が、伺った先の荒木節子事務所では広がっていた。





ジャパンファッション
FOUNDER 大竹
小林鉄平
写真 市川博繁






協力 荒木節子
    荒木節子事務所

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